あらすじ
「結界なんて、誰にでもできる」
そう言い捨てられて、結界師のレンは、“迷宮最強”ギルドを追放された。
コストのかさむ不良債権であること。そして――「災いの種」だという、嫁を連れていること。それが理由だった。
だが、誰も知らなかった。
護符を四隅に置くだけの、地味な仕事。その安物に見える紙が、実は市販品とは桁違いの自作で、七年間、パーティーの死者をゼロに保っていたことを。
レンが毎晩ひとり先に潜り、誰もいない道に護符を敷き、脅威を“起きる前に”消していたことを。
本人だけが、気づかない。
「まあ、あいつらなら、大丈夫だろう」
月光を浴びなければ魔物になる、呪いの嫁ノラ。その災いを抑えられるのは、世界でただひとり、レンの結界だけ。
働き口も家も失った新婚夫婦は、迷宮のすみっこに、二人ぶんの居場所を作ることにした。のんびり、細々と。
そして――彼を「不良債権」として切り捨てた迷宮最強ギルドは、前人未踏の大遠征で、失って初めて気づくことになる。
自分たちの足元の道が、誰の引いた線の上にあったのかを。
誰も、足元の線が、誰かの引いたものだとは思わない。
線が消えたことに気づくのは、いつも“外”が、雪崩れ込んでからだ。