あらすじ
「自分が好きになった人は不幸になる」
そう信じて、誰かを好きになることを避けてきた大学一年生の一ノ瀬凪。
雨の日に出会った青年・桐谷湊は、ある日突然告げる。
「三か月だけ、俺と付き合わん?」
本気で好きにならない。キスをしない。将来の約束をしない。「ずっと」と言わない。そして三か月後には、何もなかったことにする。
奇妙な六つの約束から始まった「恋人ごっこ」は、ファミレスで選ぶ夕飯、スーパーでの買い物、いつの間にか二本になった歯ブラシ――何でもない日常を重ねるうちに、本物の恋へと変わっていく。
けれど湊には、凪に言えない秘密があった。
「大丈夫」
「大したことない」
繰り返されるその言葉の裏で、湊は静かに、ある決断を隠し続けている。
忘れてほしいのに、写真を残したくなる。
消えるつもりなのに、凪の部屋に物が増えていく。
「残したくない」と「残りたい」。その矛盾を抱えたまま、二人はやがて、「相手のため」に相手の人生を決めることをやめていく。
「大丈夫」なんて、本当は一度も大丈夫じゃなかった。
それでも――
未来を諦めていた二人が、何でもない毎日の中で、もう一度、自分から未来を欲しがるようになるまでの物語。