あらすじ
大学生の朝倉朔也は最近、人の感情が身体の外側に重なる輪郭として見えるようになっていた。
怒っている。困っている。近づいてほしくない。ぼやけた形から、その程度が分かるだけの力だった。
ある日、朝倉は、同じ講義を受ける白銀澪にだけ輪郭がないことに気づく。何か月も同じ教室にいたはずなのに、彼女を見た覚えさえなかった。
足元へ転がってきた消しゴムをきっかけに、二人は言葉を交わし始める。隣の席、共同課題、飼い猫の写真。感情の見えない相手に戸惑いながら、朝倉は少しずつ白銀を知っていく。
だが、白銀との距離が縮まるほど、輪郭を見る力は強くなる。見えるはずのないものが見え、記憶には説明のつかない空白が残り、平凡だった大学生活へ異変が入り込んでいく。
なぜ、彼女にだけ輪郭がないのか。
なぜ、彼女のそばで能力が変わるのか。
やがて朝倉は、白銀のいる世界から切り離される。
転移した先は、物理法則さえ異なる世界だった。朝倉はそこで生き延びながら、彼女のもとへ帰る方法を探し始める。
現代に残された白銀もまた、途絶えた連絡と残された記録を手掛かりに、朝倉の行方を追い始める。
これは、異なる世界に隔てられた二人が、もう一度互いへたどり着こうとする物語。