あらすじ
大学院で近世文学を専攻する吉田圭介は、ある金曜の深夜、研究室の書庫整理中に題箋のない謎の小冊子『字影秘録』を発見する。
直後に現れた指導教員の佐伯教授は、その古い冊子を抱え込むように没収し、古代の漢字学者・白川静の説を引き合いに出しながら、不穏な漢字の成り立ちについて語り始める。
「漢字の底に潜む本当の姿」を知ってしまったその夜から、圭介の日常は一変した。
帰り道、すれ違う人々の首元に見える異様な「霞」。
どこからともなく響く、乾いた木の実を噛むような「かちり、かちり」という不気味な音。
やがて圭介の目には、人々の背中にしがみつき、首を締め上げる「黒い異形の影」が見えるようになってしまう。
恐怖に駆られた圭介は、再び研究室へ向かい、机上に残された『字影秘録』を解読する。
そこに記されていたのは、「人」という文字に隠された戦慄の真相と、影に憑かれないための絶対の禁忌(ルール)だった。
一度認識してしまえば、もう逃れられない。
忍び寄る「かちり」の音と、二つ目の鼓動。
抗おうとする圭介を待ち受ける、恐ろしい運命とは――。