あらすじ
就職活動中の大学生・古澤波留は、亡き曾祖母の遺品から見つかった一枚の古い絵画を手に、あるギャラリーを訪れる。
日本家屋の縁側に座る女性。その後ろ姿を描いた絵には、作者の署名と、意味のわからない暗号が残されていた。
絵を鑑定するのは、ギャラリーのオーナー兼鑑定士・沖田嗣春。口が悪く、愛想もない彼だったが、絵をひと目見て、明治から昭和初期に活躍した画家・新井宗伯の作品ではないかと指摘する。
もし本物なら、絵は高額で売れるかもしれない。
波留には、どうしても金が必要だった。両親が営む町工場が多額の借金を抱え、倒産まで残された時間はわずか一か月。絵を売って、家族を救いたい。
しかし、慎重な沖田は「本物の可能性が高い」という科学分析の結果だけでは鑑定を下そうとしない。
なぜ、この絵は曾祖母のもとに残されたのか。
描かれている女性は誰なのか。
そして、絵の裏に記された暗号は何を意味するのか。
金のために絵を売りたい大学生と、真贋に一切の妥協を許さない鑑定士。
最悪の出会いから始まったふたりは、絵の来歴を追ううち、曾祖母がかつて暮らしていた東北へと向かうことになる。
一枚の絵に秘められた、百年前の物語を探して――。
【登場人物紹介】
古澤波留(ふるさわ はる)
就職活動中の大学生。亡き曾祖母の遺品から見つかった絵を売り、実家の町工場を救おうとする。行動力はあるが、焦ると感情が先走ってしまう一面も。
沖田嗣春(おきた つぐはる)
ギャラリーのオーナー兼鑑定士。ぶっきらぼうで口が悪く、第一印象は最悪。しかし、美術品の鑑定には誰よりも誠実で、真贋を見極めることに強い信念を持つ。大の甘党。
古澤清枝(ふるさわ きよえ)
波留の亡き曾祖母。生前は多くを語らなかったが、遺品の中から一枚の絵と、絵の秘密につながる手がかりが見つかる。
横尾(よこお)
沖田のギャラリーで働く従業員。ぶっきらぼうな沖田を陰ながら支える人物。波留に沖田の過去を語ることになる。
新井宗伯(あらい そうはく)
明治から昭和初期にかけて活動した画家。寡作ながら独特の作風で知られ、晩年は岩手で過ごしたとされる。波留が曾祖母の遺品から見つけた絵は、彼の作品ではないかと沖田に見抜かれる。だが、その絵の来歴を追うにつれ、宗伯の知られざる過去が浮かび上がっていく。