あらすじ
「夜明けと共に、君との婚約は溶けて消える」
卒業夜会の広間で、第二王子ユリウスから詩的な言葉で婚約破棄を告げられた公爵令嬢リゼット・アルヴァン。「冷たすぎる」「温かくない」——それが理由だという。
だが彼女は喚かなかった。前世は過労で命を落とした救急救命士・鈴宮理恵。心肺蘇生の現場で泣いている余裕などない。感情より数字を、そして最大の命を救う判断を——その記憶を抱えて転生した彼女にとって、恋ではなく政略で結ばれた「約束」など、明け方に溶ける露に過ぎなかった。
しかしリゼットには、誰も理解していなかった価値があった。規格外の複合ギフト『錬金+解析』。そして彼女だけが造れる『陽光凝縮ポーション』——夜明けに実体化し村を喰らう『溶ける刻の魔物』を無力化する、国境防衛の唯一の切り札。
「この婚約と共に、私の錬金術と魔物対策の全知識も、王家から引き上げます」
王都を去り、辺境の冒険者ギルドへ。前世の救命ロジックを魔物対策に転用したリゼットの予測は百発百中。被害ゼロを積み重ねる彼女を、辺境の人々は「宝」と呼んだ。
そして、夜明けに苦しむ孤独な獣人と出会ったとき——彼女の静かな強さが、誰かの朝を変えていく。
「あなたの約束は溶けても、私の造る夜明けは、溶けない」
溶ける約束なんて、最初から要らなかった。前世の記憶を持つ錬金令嬢が、夜明けの魔物退治で成り上がる、痛快転生ファンタジー。