あらすじ
十年前、疫病と洪水を招いた「水狂い」として故郷を追われた水車番の娘オーレリー。自分の製粉所を持つまでになった彼女は、大雨の迫る村へ戻ってきた。下流の六十七戸を救い、元領主エステバンに押しつけられた罪を、本当の持ち主へ返すために。
渡し守が残した修繕控え、救援積立で買われた葡萄酒、封じられた第三水門。記録と現物を一つずつ突き合わせるたび、奪われた綱は寝具を、取り戻した粉は十一軒のパンを救っていく。
だが六十七戸を守るには、十年かけて築いた彼女の製粉所を濁流へ渡さなければならない。
これは、水を見ることしかできないと蔑まれた粉屋が、その職能と怒りで人々の朝食を守り、失ったものも傷も含めた今の自分を、ただ一人の伴侶として望まれるお話。