あらすじ
粗末なアパルトマンで、医師エーレントはテレシウスの帰りを待っていた。
いつもふらりと出て行き、血の匂いをまとって戻ってくる白銀の男。
一緒に暮らそうという誘いを断ったのは自分だった。
だからこそ、いつ終わるか分からない今の暮らしを、エーレントは壊れそうな宝物のように大切にしている。
その日、ようやく帰ってきたテレシウスは、劇薬ヴェノムに侵され、死の淵にいた。
必死に治療するエーレント。
幻覚の中で、ただ彼の名を呼び続けるテレシウス。
そして一昼夜を越えたあと、二人はまた、血の匂いと薬湯の湯気が混じる小さな部屋で食卓を囲む。
これは二百年前。
まだ何者でもなかった二人が、失うことを恐れながら守っていた、小さな日々の物語。