あらすじ
『蘇芳の棘(すをうのいばら)』
あらすじ
西暦2048年。
人類は、「平和」という言葉を教科書の中でしか知らない世代を迎えていた。
世界を崩壊へ導いたのは、正体不明の神経感染症――Λ(ラムダ)ウイルス。
感染者の一部は死亡し、一部は人格崩壊を起こし、そしてごく僅かな者は、人間の限界を超えた身体能力や知覚能力を獲得する「覚醒者」となった。
さらに世界には、Λウイルスとは異なる二つの危険な疾患が存在する。
心臓と精神を侵す棘心症。
細胞を異常増殖させる薔薇症候群。
三つの感染症は世界各国の軍事・医療研究機関によって研究され、感染者は兵器として利用され始めていた。
一方、AI技術もまた人類を大きく変えていた。
日本では統治AI――**《AMATERAS》**が国家運営の中枢を担い、犯罪率は世界最低水準にまで低下した。
しかし、その代償として国民の行動、会話、健康状態、購買履歴までもが監視される超管理社会が形成されていた。
そんな日本の中に存在する巨大学園都市――蘇芳市。
人口約230万人。
昼間は学生たちが学校へ通い、部活動を楽しみ、友人と笑い、恋愛をする。
しかし夜になれば、反政府組織、感染者、企業私兵、海外PMCなどが衝突し、銃声と警報が街を覆う。
昼は学生。夜は生存者。
その蘇芳市にある全国最高峰の学園、私立蘇芳総合学園――SGA。
そこに通う高校二年生、高峰 澪。
医学書をこよなく愛し、古書店や図書館、病院の資料室を巡る「白銀のカルテコレクター」。
16歳とは思えない医学知識と驚異的な記憶力を持つ彼女は、将来、監察医になることを夢見ている。
彼女の父親は、蘇芳市でも屈指の法医学者――高峰 雫。
「紅い瞳の監察医」と呼ばれる彼は、三大感染症すべての研究経験を持つ天才医師でありながら、同時に優れた射撃手でもある。
そして澪の祖父は、世界有数の巨大財閥・高峰財閥を率いる第八代当主――高峰 譲二郎。
老いを拒み、莫大な資金を再生医療や遺伝子研究につぎ込み、少年のような姿を手に入れた老人。
金で世界を動かす祖父。
医学で死に抗う父。
そして、知識によって命を救おうとする少女。
三世代の高峰家は、知らず知らずのうちに、蘇芳市と三大感染症、そしてAI社会の核心へと繋がっていた。
やがて澪は、医学書を読むだけでは辿り着けない領域へ足を踏み入れる。
自分が知っている医学。
父が隠している過去。
祖父が築き上げた財閥。
SGAに隠された軍事教育。
そして、政府が決して公表しないΛウイルスの真実。
「私は、ただ医学が好きだっただけなのに。」
棘に覆われた都市で、少女の青春は少しずつ戦争へと変わっていく。
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主要登場人物
高峰 澪
――「白銀のカルテコレクター」
性別: 女性
年齢: 16歳
学年: 高校2年生
身長: 149cm
体重: 39kg
蘇芳総合学園に通う本作の主人公。
幼少期から病院や監察室に出入りしていた影響で、一般的な少女とは異なる価値観を持つ。
絵本より医学辞典を好み、小学生の頃には大学医学部レベルの人体名称を暗記していた。
一度読んだ医学書をほぼ記憶できるほど記憶力が高く、医学知識は同年代を遥かに凌駕する。
性格は物静かで、初対面では無表情に見える。
しかし医学の話になると突然饒舌になる。
他者への共感性は高いものの、物事を感情より知識から考える癖がある。
特徴
軽度アルビノ
弱視
光過敏
慢性的な貧血
遮光眼鏡を使用
拡大鏡を携帯
人体解剖図の模写が得意
基本的な応急処置が可能
長距離走など体力を使う活動は苦手
好きなもの
医学書、人体解剖図、万年筆、静かな図書館、ブラックコーヒーの香り。
将来の夢
監察医。
ただ死因を調べるのではなく、
> 「亡くなった人の最後を調べることで、生きている人を救いたい」
と考えている。
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高峰 雫
――「紅い瞳の監察医」
本名: ロナウド・シュナイダー・高峰
英名: Ronald Schneider Takamine
性別: 男性
年齢: 32歳
身長: 183cm
体重: 82kg
出身: エストニア共和国・タリン
蘇芳総合学園・医療科教員。
同時に蘇芳市中央監察医務院で監察医を務める。
法医学、監察医療、外傷診断、麻酔学、災害医療などを専門とする。
三大感染症――棘心症、薔薇症候群、Λウイルスすべての研究経験を持つ、蘇芳市でも屈指の専門家。
幼少期にはアルビノ患者として研究施設で管理され、光刺激試験や薬剤実験を受けていた過去を持つ。
その後、医師となり、戦争、テロ、感染症、紛争による遺体の検死・解剖を数多く担当してきた。
性格は飄々としており、皮肉と軽口が多い。
しかし医療現場では一切妥協しない。
**「患者を途中で見捨てること」**を何より嫌う。
身体的特徴
先天性アルビノ
弱視
光過敏
慢性偏頭痛
腰痛
慢性的倦怠感
肺疾患の後遺症
低体温
食物アレルギー
遮光ゴーグルを常用
戦闘能力
医師でありながら非常に高い射撃能力を持つ。
学生時代にはオリンピック射撃競技で銀メダルを獲得。
愛銃は高精度ライフル、R20-Rahe。
必要とあれば医師とは思えないほど正確な射撃を行う。
澪との関係
澪の父親。
医学知識を教えた最大の師でもある。
一方で、自分が歩んできた危険な医療・戦争の世界に娘を巻き込みたくないと考えている。
澪からは、
「変人だけど、世界一すごい医者」
として尊敬されている。
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高峰 譲二郎
――「永遠を買った財閥当主」
性別: 男性
年齢: 89歳
身長: 151cm
体重: 41kg
役職: 高峰財閥 第八代当主
世界有数の巨大財閥、高峰財閥を率いる老人。
若き頃は冷酷な経営者として知られ、企業買収や医療・製薬事業への投資によって財閥を巨大化させた。
しかし老いへの恐怖から、60代以降は再生医療、遺伝子研究、美容外科などへ莫大な資金を投入。
数十回にも及ぶ手術と再建を繰り返し、現在では十代後半から二十歳ほどにしか見えない少年のような姿をしている。
その一方、内臓や骨格は89歳相応に衰えており、自力歩行はできない。
常に特注の電動車椅子を使用している。
身体状態
重度心不全
慢性腎不全
全身性骨粗鬆症
糖尿病
人工弁
多数の人工関節
補聴器
人工水晶体
慢性疼痛
全身の広範囲に手術歴
性格
普段は穏やかで上品。
しかし経営者としては徹底的に合理主義。
人間を「資源」として見る傾向がある。
政治、経済、医療、企業経営に対する影響力は非常に大きい。
雫との関係
雫の祖父。
雫の医学的才能は高く評価しているが、財閥の権力を拒絶する生き方には呆れている。
一方、雫も祖父を「金で世界を測る老人」と見て距離を置いている。
二人は互いの能力を認めながらも、思想だけは決して一致しない。
澪との関係
孫娘。
雫とは違い、譲二郎は澪に対して一定の関心を持っている。
澪の医学知識と記憶力を高く評価しており、彼女が将来、高峰家の医学研究に関わる可能性にも注目している。
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高峰家の関係
高峰 譲二郎
【高峰財閥 第八代当主】
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高峰 雫
【監察医・医療科教員】
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高峰 澪
【高校2年生・主人公】
この三人は同じ「命」を見ながら、思想が異なる。
譲二郎
> 「金と技術で、老いすら克服する。」
雫
> 「死んだ人間からでも、最後の真実を探す。」
澪
> 「知識があれば、次に死ぬ人を救える。」
この三世代の価値観が、『蘇芳の棘』における高峰家の中心的なテーマになる。