あらすじ
ある晴れた日の午後だった。病院の中庭には穏やかな時間が流れていた。柔らかな陽射しが芝生や遊歩道を照らし、風が植込みの花々を揺らして、ほのかな香りを運んでくる。頭上では鳥たちが戯れるように飛び交い、軽快な鳴き声を響かせていた。
そんな中庭を二人の男女が歩いていた。
肩を並べ、ゆっくりとした足取りで進みながら、他愛のない言葉を交わしている。ふと視線が合うと、くすりと笑って目を逸らし、少しの沈黙を挟んでは、またぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。二人の間には、そんなぎこちなくも和やかな空気が流れていた。
やがて男の歩調が少しずつ緩み、二人の間にわずかな距離が生じた。それに気づいた彼女は足を止め、振り返った。
小首を傾げ、不思議そうに見つめる彼女。男はその場に立ち尽くし、ごくりと唾を飲み込んだ。
「あの!」