あらすじ
【本翻案の趣旨と原作について】
本作は、フランスの巨匠オノレ・ド・バルザックの短編連作集『風変わりな話』(原題:Contes drolatiques / 『風流滑稽譚』とも)の持つシニカルでユーモラスな人間描写を、江戸時代の東海道を舞台に大胆に翻案(ローカライズ)した連作喜劇小説です。
原作が描く「人間の強欲さ、見栄、そして滑稽な裏切り合い」を、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』が持つ「ダメ人間が必死に知恵を絞るドタバタ劇」のノリに完全に重ね合わせました。お説教は一切なし、欲の皮が突っ張った者たちが織りなす痛快な騙し合いをお届けします。
【あらすじ】
博打と酒で寺を追われた破戒僧・円覚(えんがく)と、その巧みな話術に引っかかった相棒の留吉(とめきち)。一文無しの二人が東海道を西へ進みながら、出会う人々の「欲」と「恐怖心」につけ込み、次々とハッタリとペテンを仕掛けていくロードムービー風の全三話完結オムニバスです。
第1話『箱根の山で一文無し』
(原典の「中世フランスの修道院や旅人たちのペテン劇」のトーンを翻案)
箱根の宿に無一文で辿り着いた二人は、「万病消滅の厄除け香木」と称するタダの木の根っこで宿代をごまかそうとするが、敏腕な主人に返り討ちに遭い、池の掃除をさせられる羽目に。
第二話『由井の宿、怪しげな霊薬』
(原典の「医者や詐欺師が巻き起こすブラックな滑稽劇」を翻案)
駿河の国・由井の宿で、胃痛に苦しむ強欲な豪商を見つけた円覚。薬種屋からくすねたただの「泥水」を奇跡の霊薬と偽り、高額な金をせしめるが、薬が効きすぎてまさかの大惨事に……?
第三話『京の手前、最後のハッタリ』
(原典の「権威や宗教を利用したペテン師の最後の一攫千金」を翻案)
いよいよ京の都の寸前、草津の宿。最後のヤマとして、ガラクタの木彫りを「比叡山の秘仏」と偽って豪商に売りつけるが、またしても追っ手が迫り、鈴鹿の山へ泥まみれで逃げ延びる!
欲深さが招く自業自得のペテンと大逃走。果して二人は京へたどり着けるのか、それとも――? テンポの良い江戸の笑いをお楽しみください。