あらすじ
屠龙の勇者は、今日もひどく気分が沈んでいた。
また、人々の悪意に満ちた罵声を聞いた。
そして――王の顔に浮かぶ、隠そうともしない侮蔑の表情も。
勇者は、自分の身体を見下ろした。
そこには、縦横無尽に刻まれた傷跡がある。
新しい傷。
古い傷。
もう痛みすら感じない傷もあれば、今もなお疼き続ける傷もある。
幾重にも重なった傷跡。
古傷が癒える前に、新たな傷を負う。
そんな日々を、彼はずっと繰り返してきた。
ふと――勇者は、これまでの旅を思い出した。
道中で出会った、かつての仲間たち。
彼らは皆、背後にある王国を守るために、恐れることなく血を流した。
冷たく、暗い大地の上で。
一人、また一人と。
勇者は、あの少年の柔らかな笑顔を思い出した。
少女の軽やかな歌声を思い出した。
もう二度と戻ってこない、大切な時間。
大切な仲間たち。
彼は、静かに目を閉じた。
――もう、疲れた。
これまでに、あまりにも多くの大切なものを失ってきた。
だからもう。
これ以上の痛みを、受け止めることなんてできなかった。