あらすじ

少年には、誰にも言えない秘密がある。 ――自分が生きた、全ての前世を覚えている。 掘削が得意な奴隷、大賢者の弟子、剣聖の孫娘、漁師、狩人、商人、農民、鍛冶職人、薬師……。 数え切れないほどの人生を生きてきた。 しかし、そのどの人生でも、少年は歴史に名を残さなかった。 いつだって英雄の隣にいる、名もなき人間。 そして今世。 少年――ユウ・タナカは十五歳になった。 「今度こそ、普通に生きよう」 英雄にもならない。世界も救わない。 働いて、食べて、眠る。 どこにでもいる普通の少年として生きる。 ……そのはずだった。 宿屋で働けば勇者一行が泊まりに来る。 港町で漁師を手伝えば、勇者たちが船を探しに来る。 武器屋で働けば、魔王討伐を目前にした勇者が現れる。 鉱山で働けば、魔王軍の秘密基地を探す勇者たちと鉢合わせる。 「……お前、またいるな?」 「偶然ですよ」 「絶対に偶然じゃないだろ!」 ユウ自身にも分からない。 本当に偶然なのか。 それとも、前世の記憶が無意識に英雄たちを導いているのか。 ただ一つ確かなのは、ユウは英雄たちの前には立たないということ。 その代わり―― 壊れた武器を直し、食料を用意し、危険を見抜き、魔物の習性を教え、敵の補給路を断つ。 誰にも知られない場所から、英雄たちを支えていく。 「助かった! 君がいなかったら危なかった!」 「いや、俺はバイトしてただけなんで」 歴史に名を残すのは、いつだって英雄たち。 けれど、英雄が英雄になれた理由を辿れば、必ずどこかにユウがいる。 これは、全ての前世でモブだった少年が、今世でもモブのまま世界を救ってしまう物語。 そして最後にユウは気づく。 英雄の後ろで誰かを支えることも―― 確かに、自分が選んだ一つの人生だったのだと。

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小説を読もう2026/08/25
  • 現在の作品全前世でモブだった俺、今世も英雄の後ろで暗躍します