あらすじ
西暦 二一二六年。
文明が発展を遂げる一方、その恩恵から取り残された辺境の町や村では、いまだ多くの人々が病と貧困に苦しんでいた。
名医イザナギ・オウカは、十二歳の息子タケルを連れ、旧式の医療車で各地を巡っていた。
報酬も名誉も求めず、ただ目の前の命を救うために。
旅の途中、二人は流行り病に侵された村で、サナミと出会う。
物憂げな瞳の奥に優しさを秘めた少女。
人の命を救う父に憧れ、その背中を追い続ける少年。
そして、どれほど過酷な現実を前にしても、決して患者を見捨てない一人の医師。
三人は家族のように寄り添いながら、医療の届かない土地を巡っていく。
しかし、彼らが目にするのは、病に苦しむ人々だけではなかった。
見捨てられた辺境の村。命に値段をつける社会。救済を拒む権力。
そして、人間の善意だけでは決して治すことのできない、世界そのものの病――
やがてタケルは問い始める。
病んでいるのは、本当に人間なのか。
それとも、この世界そのものなのか。
後に《シンファ》の最高指導者タケル・カミナとなり、人類を再生へ導こうとした男にも、かつては一人の命を心から救いたいと願った少年時代があった。
これは、神と呼ばれた男の始まりと、その優しさ、全ての答えが、救済へ変わるまでを描く物語。