あらすじ
「君は花を育てることしかできない、土臭い女だ」
春の大夜会まで四十九日。
伯爵令嬢コーデリアは、六年間支えてきた婚約者ギルベールから、従妹との結婚を理由に婚約を破棄された。
ところが彼は、婚約を破棄したその口で命じてくる。
「大夜会までは、予定どおり庭を完成させろ」
「花など、水をやれば勝手に咲く」
無償で温室も庭園も夜会装花も支えてきたコーデリアは、初めてその命令を拒絶。作業記録だけを残し、泥のついた作業着のまま屋敷を去った。
その直後、花市場で王宮へ運ばれる薔薇苗の異変を見抜いた彼女は、病害と長年の疲弊で枯れかけた王家の薔薇園を救うため、一週間の試用仕事を与えられる。
けれど、コーデリアも最初から完璧ではない。
王宮の土を読み違えて苗を萎れさせ、熟練庭園長に教えを請い、自分の失敗を記録へ残す。そうして仲間とともに、一株ずつ薔薇園を立て直していく。
そんな彼女を見守るのは、亡き母の思い出から薔薇園を十年間閉ざしてきた皇太子ダリウス。
彼女が作った香りの弱い小庭へ「庭園の確認だ」と毎朝通い、二人分の朝食を用意し、若い庭師に昼食へ誘われた彼女を見れば、理知的な皇太子らしからぬ嫉妬まで隠せない。
一方、コーデリアを追い出した旧邸では、庭師の削減、過剰な加温、換気停止、輸入苗の検疫省略が重なり、薔薇が次々と病に倒れていた。
大夜会を目前に、ギルベールたちはコーデリアへ懇願する。
「三日だけ戻れ。君なら間に合わせられる」
コーデリアは答えた。
「私は花を咲かせられます」
「でも、あなたの見栄のためには咲かせません」
「あなたの夜会に、花びら一枚だって飾って差し上げません」
果たして、春の大夜会で咲いた薔薇は――一輪もなかった。
仕事の誇りも、自分で選んだ居場所も、尊重される恋も手放さない。
土臭いと捨てられた令嬢が、王宮庭園師として再評価され、不器用な皇太子から一途に愛される、お仕事令嬢の大逆転ラブストーリー。