あらすじ
【第32回スニーカー大賞応募用あらすじ/ネタバレ注意】
英雄ギルデロイが最後の魔神を討ってから数年。彼は姿を消し、街には美化された英雄譚だけが残った。
中継都市ベルツの配達員アンジェリーナは、自分より軽い物しか動かせない天賦の持ち主である。幼い頃、魔物に襲われた村で瓦礫の下の両親を見捨てて逃げ、以来自分を許せずにいた。
路地裏で彼女を助けたずぶ濡れの少年は、失踪した英雄その人だった。魔神の呪いで、水を浴びれば子どもに、湯を浴びれば元の姿に戻る体になっている。目的は、主を失ってなお暗躍する使徒の追跡だった。
下水道の魔物を討ち、炭鉱村の失踪事件を追った二人は、領主名義の文書を得る。かつての仲間である女商人も加わり、領主が使徒イルルシオに成り代わられ、街の発展が地下掌握の布石だと判明する。
夜会に潜入したアンジェは薬を盛られ、姿と記憶を奪われる。イルルシオは、両親を見殺しにした罪悪感だけでなく、もっと早く来ていればと英雄を逆恨みしていた本音まで暴く。暗殺は防がれるが、使徒は逃走する。
救出された本物の領主の証言で、使徒の目的が不死の魔神の復活だと知れる。英雄たちはかつてこの魔神を討てず、封印したにすぎなかった。墓地で魔神は解き放たれ、仲間が足止めをする間、ギルデロイはアンジェを核へ導く。核は結界に守られ、いかなる攻撃も届かない。
そこで彼は懺悔する。かつて自分が初めて討った使徒こそ両親の仇であり、功名心から戦いを優先したせいで、瓦礫の下の二人を救えなかったのだ、と。互いの罪を明かし合い、アンジェは彼を赦す。その時、届かないはずの核が「軽く」見えた。彼女はそれを掴み、砕く。
再生して空へ逃げる魔神を、アンジェは雨粒を空中に固定して縫い止め、英雄がとどめを刺した。報酬は一生分に足りたが、彼女は次の依頼のため相棒の隣に座る。逃げてばかりだった自分を、ようやく少し好きになれそうだと思いながら。