あらすじ
その街では、神様と人間が、当たり前のように暮らしている。
神無瀬市――人間と異能存在の共存を掲げる、少し変わった街。
高校生の此花理乃は、そんな街でごく普通の学生として暮らしている。
ただ一つだけ、普通ではないものがあった。
彼女は、神格から与えられた権能――「名探偵」を持っている。
事件の答えそのものが見えるわけではない。
犯人の顔が浮かぶわけでもない。
ただ、そこに「何かがおかしい」という違和感だけが、確かな感触として与えられる。
だから理乃は、事件を避けることができない。
夏休みを目前にしたある日、理乃は山で一人の青年が行方不明になったという話を耳にする。
最後に目撃されたのは、何の変哲もない一本道。
しかし理乃には、その青年の足取りが――
「途中で、何かに断ち切られた」
ように感じられた。
最初は、ただの失踪だった。
けれど、隣町でも同じような事件が起きていることを知り、理乃はそれが偶然ではないことに気づき始める。
一方、神格鑑定局本部では、局長補佐・古峯燈子が複数の失踪事件に共通する異常を追っていた。
そして岩手支部の渉外課長・高村宏一は、神格たちの間に広がる奇妙な噂を知る。
道に縁のある神々が、最近、道を歩かなくなっている。
人間も。
神格も。
誰もが、何かを恐れている。
その正体は、かつて記録された謎の事象――
「神送りの狭間」なのか。
なんでもないはずの道が、知らない場所へと繋がる。
そして、一度その向こう側へ消えた者は――戻ってこない。
女子高生の「名探偵」。
巨大な組織を背負う局長補佐。
神格たちの世界を歩き回る渉外課長。
三人の視点が交差するとき、神無瀬市の「日常」の裏側に隠されていたものが、少しずつ姿を現していく。
これは、神様と人間が共に暮らす街で起きる、不可解な失踪事件の物語。
そして理乃はまだ知らない。
彼女が追い始めた「事件」が、やがてこの街そのものの在り方を揺るがすことを。