あらすじ
二十五歳の佐藤大翔は、金に困り、SNSで見つけた高額アルバイトに応募した。
氏名、住所、家族構成、運転免許証――。
求められるまま個人情報を渡した大翔が、それが「強盗の実行役」を集める闇バイトだったと知ったのは、もう逃げられなくなってからだった。
逃げれば、家族に危害を加える。
そう脅され、黒いヴォクシーに乗せられた大翔は、やがて自分たちが向かっている場所を知る。
強盗先は、叔父・雅彦の家だった。
だが、それは誰かが仕組んだものではなかった。
闇社会で売買された《薔薇の家》という「案件」と、SNSから集められた大翔という「実行役」。
本来つながるはずのなかった二つが、偶然、一つになったのだ。
このまま従えば、大切な人を傷つける。
逆らえば、自分の家族が狙われる。
そのころ大翔の叔父・雅彦は、自らの薔薇園で、何十年も花を育て続けていた。
若き日にヨーロッパで出会った老人から聞いた、ある言葉を胸に。
「花は、人を幸せにするからだよ」
人の人生が「案件」になり、人間が「実行役」として売り買いされる世界。
しかし、その「案件」にも名前がある。家族がいる。積み重ねてきた人生がある。
もし、その家が自分の大切な人の家だったら――。
人は、何のために働き、何のために生きるのか。
そして人は、誰かを不幸にするためではなく、誰かを幸せにするために生きているのではないか。
闇バイト強盗によって一つの家に集まった人間たちを描く、犯罪群像小説。