あらすじ
家族商会の奥で、依頼文や申請書を整える代筆屋の私、セヴリーヌ。けれど兄は完成した文書から筆名を切り取り、報酬も手柄も自分のものにしていた。そんな私を訪ねてきたのは、戦傷で長文を書けない無口な騎士コンスタン様。負傷兵十二名の補償申請と物資輸送の通達は無事に人々へ届き、彼だけは私の名を正しく呼んでくれた。ところが兄が次に命じたのは、コンスタン様名義の偽りの求婚状だった。「契約外です」と拒んだ私は、自ら家族商会の看板を外し、下書きと納品票を手に名義を取り戻すため動き出す。これは、他人の言葉しか持たないと蔑まれた代筆屋が仕事で汚名を覆し、たった一行の本物の言葉で生涯の伴侶に望まれるお話。