あらすじ
二百五十万円を払い、ガラポンを回す。出た色が、そのまま愛車の色になる――当たれば数百万のプレミア、外れれば市場で安く買い叩かれるだけの色。
五十八歳、早期退職したばかりのコウジがその日引いたのは、誰も欲しがらない「ドブ緑」だった。
「これがいい」
戸惑う店員に、コウジは短くそう答えた。三十五年前、まだ二十三歳だったコウジが初めて買ったバイクは、これと同じ、地味な深緑色をしていた。「森みたいな色だね」と笑っていた、あの人と一緒に。
SSRでも、幸運でもない。それでも、この色には、他の誰にも譲れない理由があった。
一攫千金の物語ではない。ただ一人の男が、確率〇・五パーセントの隣で、自分だけの一台を選び直す話。
『鉄のガワ』と同じ世界を舞台にした、もう一つの物語。