あらすじ
一度目の人生は、失敗の連続だった。
信仰に縛られた家庭に生まれ、大学を離れ、借金を抱え、遠回りを重ねたまま三十代を迎えた男。人生を立て直そうとしても、失った時間だけは戻らない。
――そう思っていた。
目を覚ますと、彼は子供の頃に戻っていた。
覚えているのは未来の断片。ビットコインの高騰、イーサリアムの登場、世界的な感染症、そしてAIと半導体の飛躍。細かな株価も宝くじの番号も知らない。ただ、「何が世界を変えるか」だけは知っていた。
二度目は間違えない。
お年玉とアルバイト代を投資し、勉強を続け、家を出る。大学へ進み、やがてアメリカで博士課程に挑む。資産は数百万、数千万、数億へ。未来の知識は、彼にかつて得られなかった自由を与えていく。
だが、成功するほど世界は記憶からずれていった。
出会うはずのなかった人と出会い、救われるはずのなかった企業が生き残る。そして巨大になった彼自身の資金が、市場と歴史を変え始める。
ある日、彼は気づく。
――もう、この先を知らない。
それでも資産は増え続け、ついには数千億円へ達する。
未来を知っていた男が、未来を失ったとき、何を選ぶのか。
これは、人生をやり直して大富豪になる物語ではない。
決められた未来を利用して生きてきた男が、初めて自分の意思で「明日」を選ぶまでの物語。