あらすじ
肖像画修復師クロエは、腕を褒めたあとで作者名や報酬を奪おうとする求婚者を二人続けて断り、姉の工房で匿名を貫いていた。ところが姉が依頼束へ紛れ込ませた、宝石も細腰も盛り放題の見合い肖像を丸めて捨てようとしたところ、訪ねてきた辺境伯エヴラールの額へ直撃してしまう。
彼はそれを拒絶ではなく、修復師からの熱心な修正指示だと思い込んだ。しかも直してほしいのは、見栄えよく描き変えられた自分の曲がった鼻だという。
以来、毎週工房へ通い、入室の許可を待ち、正しい料金を払い、クロエの名を依頼票へ記すエヴラール。そんな彼の肖像を仕上げる日、巨大な額縁が落下して――。
笑われる前に欠点を数えてきたクロエが、何を隠し、何を残し、誰の隣に立つかを選ぶお話。