あらすじ
「この石が光っている限り、君の命は僕の指先にある」
虐待の末に家を追われ、雨の公園で命を絶とうとしていた少女・リナ。
彼女の前に現れたのは、過剰なほど清潔で完璧主義な男装の麗人——連続殺人鬼のシオンだった。
北浜のアンティーク店でリナの首元に嵌められた、真紅のルビーが輝くプラチナのチョーカー。
それはシオンの「最高傑作」となった証であり、決して解けない甘い枷。
シオンが放つ高濃度の塩素と鉄の匂い、冷たい手、そしてすべてを支配する絶対的な愛。
不快な世界で傷つけられてきたリナにとって、シオンの所有物となることだけが人生で唯一の「生きた理由」となった。
しかし、佐々木警部補率いる警察の捜査網が二人へと静かに忍び寄る。
追跡をかわし、車を走らせて辿り着いたのは、山あいに佇む閉鎖された廃診療所。
その地下にある、高濃度の塩素で過剰滅菌された「無菌室」。
足元に撒き散らされる黒いガソリン、手に握られた真鍮のメス。
警察の手が及ぶ前に、最も美しい姿のまま作品として終わらせようとするシオン。
けれど、その冷ややかな刃を前にしてリナの胸から溢れ出したのは、シオンの計算された美学をも狂わせる、身勝手で狂おしい叫びだった。
「生きて……生きてほしい! でも……私を一人にしないで……!」
破砕音とともに迫る警察の怒号、駆け下りてくる足音、そして擦り上げられるマッチの火花。
逃げることも叶わない極限状態のなか、狂おしい愛と執着を抱えた二人が選んだ「ひとつになるための決着」とは——。
世間にとっては痛ましいニュースとして処理される事件の裏側で、猛烈な熱と炎の中に咲き誇った、一輪の真紅の花の物語