あらすじ
王太子妃選抜の採点係を務めております、文官の娘サビーヌと申します。
科目は礼法、家政、政務の三つ。採点基準書を書いたのは、二年前に亡くなりましたわたくしの母です。わたくしはそれを、一字も曲げずに運用いたします。
公爵家の御使者が「点を上げよ」と仰いました。規定を読み上げて、お返しいたしました。
贈り物の箱が届きました。規定のとおり、贈り主のお名前とともに受領の記録を作り、選抜の費えに納めました。
脅すお方には、採点の記の写しが三つあることと、そのうち二つの在り処をお知らせしております。三つ目の在り処は、規定により、わたくししか知りません。
落ちるべき候補さまは、規定どおりに落ちてまいります。その一方で、どなたも気に留めていらっしゃらなかった田舎の候補さまが、この選抜で初めての満点をお取りになりました。宮廷が、にわかに騒がしゅうございます。
「公爵令嬢様の点が、足りない?」
「でしたら、足りないままでございます」
――ときに、王太子殿下が選抜の場でご覧になっているのは候補のみなさまではない、という噂がございますけれど、わたくしは存じません。規定にないものは、測らないことにしておりますので。
選抜規定の終いの条に何が書いてあるか。誰よりもよく知っているのは、わたくしのはずなのですが。