あらすじ
気づけば、美咲も父も先生も、僕の名前を呼んでいなかった。
秋の岩国。父と二人で暮らす高校生の僕は、美咲と取り留めのない話をし、父のお下がりのZRXに乗る。変わらないはずの日常で、最初に引っかかったのは、美咲が届いたメッセージを伏せたことだった。
翌朝、僕を7:42:59に迎えた美咲のスマホへ、《7:43だった?》というメッセージが届く。学校では担任が僕だけを名前ではなく出席番号で呼び、数学ノートの名前欄は空白のまま。確かに書いたはずの名前は、翌朝、小さな点だけを残して消されていた。
美咲も、父も、先生も、何かを知っている。古い携帯テレビの砂嵐、7:43で止まった記憶、母から届いた白い封筒。
これは、誰かに呼ばれる名前を、自分のものとして取り戻すまでの物語。