あらすじ
毎晩、午後八時四十五分ごろになると、主人公の住む家の近くで「キーッ」という急ブレーキ音と、それに続く「ドン」という鈍い衝突音が聞こえる。警察署も消防署も近いのに、サイレンは鳴らず、翌朝になっても事故の痕跡はない。同居人にも同じ音が聞こえており、工事や設備の音とも考えるが、土日や雨の日にもほぼ同じ時刻に繰り返される。
やがて主人公は八時四十五分には外にいないという習慣を身につける。ところが、ある夜だけ音が鳴らない。数日後、近所のコンビニの女性が、その夜から行方不明になっていると知る。さらに、以前から白い犬を散歩させていた老人も、最初に音がしなかったころから姿を見せていないことに気づく。主人公は「音が鳴らない夜に誰かが消えるのではないか」と疑い始めるが、確証はない。
そんなある夜、同居人が牛乳などを買うため、八時三十三分に近所のコンビニへ出かける。八時四十五分。主人公はいつもの音が鳴ることを祈るが、その夜も何も聞こえない。同居人は帰ってこず、電話にも出ない。店員は、八時半すぎに買い物をして店を出たと証言する。
翌朝、玄関の前には同居人が買った牛乳、食パン、洗剤の入った袋だけが置かれていた。本人の姿はない。袋の中のレシートには、会計時刻として「20時45分」と印字されていた。