あらすじ
両親を亡くした47歳のユウキは、生きる意味を見失っていた。
結婚もしていない。子供もいない。
友人たちにはそれぞれ家庭があり、今さら自分の弱さをさらけ出すこともできない。
何をしても「痛い」と思われる。
失敗すれば、自分には価値がないと思ってしまう。
そんな彼女が、母の遺した香水と父が使っていた睡眠薬を握りしめて眠った翌朝――
目を覚ますと、そこは見たこともない幻想的な都市だった。
「新入りの研究者よね?」
なぜか自分は、この世界で研究者として迎えられていた。
けれど、彼女には研究の知識などない。
当然、研究は失敗ばかり。
それなのに――
「素晴らしい成果じゃないか!」
「これは誰にもできない発見だよ!」
「失敗した? いや、これは貴重なデータだ!」
失敗するたびに、周囲から褒められる。
彼女にとっては「間違い」でしかなかったものを、この世界の人々は「成果」と呼ぶ。
そしてユウキは、この世界を現実だとは信じられないまま、母の香水を何度も振りかける。
もしかしたら、これは夢なのかもしれない。
もしかしたら、研究で大きな成果を出せば――
もう一度、両親に会えるのかもしれない。
これは、自分を肯定することができなかった一人の女性が、
「失敗してもいい世界」で少しずつ心をほどいていく物語。
――私が失敗だと思ったものを、この世界は「成果」と呼んだ。