あらすじ
朝のローカル番組を、ぼんやり眺めていた。
その日の特集は、某小学校にまつわる「謎」だった。
なんでも、その小学校の校歌には、子どもの歌う校歌としては、ちょっと意外な言葉が入っているらしい。
――「死」。
「なぜ、校歌に『死』が?」
テレビでは、地元の歴史をたどりながら、その謎を解き明かしていく。
そして、ついに判明した。
昔、この土地の庄屋さんたちは、水田を守るために命を懸けていたという。
文字どおり、命がけだった。
その土地を守り、田んぼを守り、そこで暮らす人々を守った先人たちの物語。
それが、校歌になったのだという。
「なるほど……」
私はテレビを見ながら、妙に納得した。
校歌って、ただの歌じゃないんだな。
その土地の歴史や、そこで生きた人たちの思いまで、歌の中に残っている。
――などと、ちょっと感動していた、そのとき。
ふいに、別のことを思い出した。
早稲田大学の校歌は、
♪都の西北 早稲田の森に
で、始まる。
それは、志高い者の思いが、
都の西北に集まっているんだ!
という含みを持つ歌詞なのだとおもう。
さて、思い出したのは、
『天才バカボン』である。
バカボンのパパは、なんと大卒なのだ。
しかも、その出身大学の名前がすごい。
その名も――
「バカ田大学」。
そして、さらにすごいのが、その大学の校歌である。
♪みやこの西北 ワセダのとなり~
♪ バカだ~
♪ バカだ~
♪ バカだ~
♪ わ~せだの隣~
早稲田大学が、その志を「みやこの西北」という歌詞であらわしているのに対して、バカ田大学は、「どこにあるの?」と聞かれて「みやこの北西で、ほら、あの有名な早稲田の隣だよ」と答える道案内そのもので、全く何の含みも思いも持っていない校歌なのである。そこが、面白い。
朝のテレビで、歴史ある小学校の校歌の謎が解明された。
庄屋さんたちが命がけで水田を守った、その記憶が校歌になった。
それは、とてもいい話だった。
でも私は、その感動の余韻の中で、何十年も解けていない、もう一つの「校歌の謎」を思い出してしまった。
いや、早稲田大学の「隣」。
――どっち方向の隣?