あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
【登場人物の紹介】
◆雨宮爽空(あまみや・そら)
二十二歳。
香りを色・形・動きからなる「香図」として見ることができる令嬢。
十二年前の工房火災をきっかけに、自分の判断で誰かを傷つけることを恐れ、「責任」を避けて生きてきた。
ところが帝都で起きた不可解な香りの事件に巻き込まれ、その能力を再び使うことになる。
ほとんどすべての香りを描ける彼女にも、なぜか久世和成の香りだけは見えない。
◆久世和成(くぜ・かずなり)
二十八歳。
冷静沈着で「冷徹少将」と呼ばれる近衛少将。
事実と推測を厳密に分け、爽空の意思を尊重しながら事件を追う。
捜査のため爽空へ六十日間の偽装婚約を持ちかけるが、彼女に向ける感情は次第に契約の範囲を越えていく。
爽空の目には、彼だけが「香りのない空白」として映る。
◆小鳥遊結衣
明るく行動力のある爽空の協力者。
緊迫した捜査の中でも周囲を前向きにする存在。
◆藤堂亮介
正確な記録と検証を得意とする和成の協力者。
香図だけに頼らず、時刻・書類・証言を積み重ねて事件を追う。
◆榊清也
穏やかな物腰の医師。
爽空の香図を否定も盲信もせず、一つの観察結果として検証する。
◆久世七奈子
和成の叔母。
実務能力と包容力を兼ね備え、爽空と和成を時に厳しく、時に温かく支える。
【あらすじ】
香りを、色と形と動きからなる「香図」として見ることのできる雨宮爽空。
十二年前、母を失った工房火災を境に、爽空は自分の判断で誰かの人生を左右することを恐れるようになった。
そんな彼女の前に現れたのは、「冷徹少将」と呼ばれる近衛少将・久世和成。
帝都で起きた不可解な香りの事件を追うため、和成が提示したのは――
「六十日間、私の婚約者になってほしい」
捜査のためだけの偽装婚約だった。
屋敷で始まった奇妙な共同生活。
皇太子妃の茶会。
慈善演奏会を襲う香りの罠。
十二年前の火災に隠された母の研究。
そして、帝都博覧会を狙って張り巡らされる巨大な陰謀。
爽空は香図を手掛かりに、冷たい銀色の線と淡い杏色の輪、二つが重なって生まれる「中心の欠けた金色の六角形」を追っていく。
しかし、どんな香りも描ける爽空に、どうしても描けないものが一つだけあった。
久世和成の香り。
彼のそばにあるのは、香図にならない鼓動と体温だけ。
これは責任から逃げてきた令嬢が、誰かと責任を分け合うことを知り、
人の心まで図解しようとしていた彼女が、
最後には「分からないまま信じる」ことを選ぶ物語。
そして六十日間の偽装婚約は、いつしか本物の恋へ変わっていく。