あらすじ
「……お願い。私を見捨てないで」
前世は臨床心理士。
異世界に転生したナギが働くのは、冒険者ギルドの受付――そして、新設されたばかりの『こころの相談窓口』だった。
この世界には治癒魔法も回復薬もある。
骨折も傷も治せる。
けれど――心が折れた時だけは、誰もどうすればいいのか知らない。
ある日、血まみれのAランク剣士リゼが受付で崩れ落ちる。
仲間を傷つけた罪悪感。
「自分と関わった人間はみんな不幸になる」という思い込み。
最強の剣士として誰にも弱音を吐けず、一人で限界まで耐えていた彼女を、ナギは前世の知識で少しずつ立ち直らせていく。
――そこまではよかった。
翌朝。
「ナギに一番に会いたかったから」
開館一時間前から待っていたリゼは、それから毎日のようにナギのそばへ。
さらに現れるのは、
百点以外を失敗だと思う天才魔法使い。
自分の中にもう一人を抱える盗賊。
誰かを救わなければ自分に価値がないと思い込む聖女――。
心の傷を癒やすたび、彼女たちは立ち直っていく。
なのに。
「あなたは私の担当でしょう?」
「論理的に、あなたは私に不可欠よ」
「ナギお兄さんはルゥのだから!」
なぜか好意だけがどんどん重くなっていく。
だからそれは恋じゃなくて転移感情です。
剣を抜くな。
魔法陣を展開するな。
相談窓口の前で修羅場を始めるな。
そんなある日、窓口に一件の匿名相談が届く。
『人類を滅ぼすべきか迷っています』
――どうやら、心を病んでいるのは冒険者だけではないらしい。
剣も魔法も使えない受付係が、対話だけを武器に、傷ついた人々の「扉」の前に立つ。
これは、誰かの心を救い続けた男が、やがて世界を動かし――最後に自分自身の心と向き合うまでの物語。
※本編完結済み。