あらすじ

伯爵令嬢エメリア・ソレールは五年間、嗅覚の異能で王宮に出入りする三百人以上の薬効禁忌を記録してきた。婚約者のクロード王太子に「薬など女の気慰め遊び」と切り捨てられ、義妹ドレアに七冊の処方録を盗まれる形で追放された。  辺境クァルト村で薬草商として再出発したエメリアは、山道で賊に刺された兵士を嗅覚で救ったことで騎士団副長アダン・フォールスと出会う。口数少なく実直なアダンとの交流が、エメリアの凍った時間をゆっくりと溶かしていく。  ところが秋、王城で謎の毒の被害者が続出する。ドレアは七冊の処方録を持ちながら、後半二年分の記号を解読できなかった。七日で七人が倒れ、王太子まで昏倒した夜、国王の使者がエメリアを訪ねる。  「処方録は五年分でした。盗まれたことで、なくなるものでは——ありません」——エメリアの静かな一言が、三人の加害者をそれぞれの場所で転落させる。

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カクヨム2026/08/23
  • 現在の作品七日で七人が倒れた王城で、盗まれた処方録は読めなかった