あらすじ

「三枝澪さん。あなたが横領した金額は、三百七十二万円で間違いありませんね」

地味な病院事務として、目立たず、誰かの役に立つことだけを考えて生きてきた三枝澪。

ある夜、彼女は突然、三百七十二万円を横領した“犯罪者”にされた。

証拠は、澪のIDで申請された不正送金の記録。

目の前には病院幹部と義母。そして夫の隣には、妊娠を告げる不倫相手が立っていた。

差し出されたのは、離婚届と横領を認める自白書。

誰もが思っていた。

地味で、逆らったことのない澪なら、今回も黙って署名する、と。

けれど、ひとつだけおかしい。

不正送金が行われたのは、午後八時十七分。

その時、澪は母のそばにいた。

ならば。

その時刻に、澪の名前を使ったのは誰なのか。

澪は怒鳴らない。泣き叫ばない。復讐を口にもしない。

ただ、時刻を確かめる。
場所を確かめる。
金の流れを追う。
彼らが口にした言葉を覚えておく。

そして、相手が勝ったと思った瞬間に、一枚の記録を差し出す。

一人の嘘が崩れる。
次の嘘が見つかる。
その先から、さらに大きな嘘が顔を出す。

やがて、ただの不倫と横領の濡れ衣だと思っていた事件は、病院そのものを覆う不正と、亡き父の過去へとつながっていく。

これは、捨てられた妻が怒りに任せて復讐する物語ではない。

奪われた名前を。
父の名誉を。
そして、自分自身の人生を。

一人の地味な女が、事実だけで静かに取り戻していく物語。

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アルファポリス
アルファポリス2026/08/23
  • 現在の作品地味な病院事務の私に横領の罪を着せた夫へ。証拠は全部そろいましたので、あなたたちを静かに破滅させます