あらすじ
最愛の人だった「君」から届いた、たった一言の「さようなら」。
突然君を失った「僕」は、家から出ることもできず、最後に残されたメッセージと写真を眺めながら、君が何を思っていたのかを考え続ける。
ある雨の日、僕はふと、かつて君が大雨の中で家を飛び出した日のことを思い出す。
その日、君が持ち帰ったのは、雨で濡れた一冊の手記だった。
君の死後、僕はその手記を探し出し、ページを捲っていく。
そこには、海や山へ出かけた思い出だけでなく、僕には決して見せなかった君の怒りや悲しみ、弱さが綴られていた。
僕は君を一番理解していると思っていた。
けれど、手記に残された言葉が教えてくれたのは、僕の知らない「君」の存在だった。
もっと君を知っていれば。
もっと君の言葉を聞いていれば。
そんな後悔を抱えながら、僕はようやく君の墓へ向かう。
そして、あの日言えなかった言葉を伝える。
「ありがとう」
――君のいない世界で、僕はこれからも生きていく。