あらすじ
幼いころから、小田万里と南田佳奈という二人の幼馴染に囲まれて育った河野八郎。
だが八郎は、二人の優しさを「幼馴染だから許される」と勘違いし、困ったときだけ助けを求め、相手の気持ちを顧みない人間へと変わっていく。
やがて高校を卒業し、二人が距離を置くようになっても、八郎は自分の過ちに気づかなかった。
そんな二人には、八郎に告げていない秘密があった。
二人とも、八郎との子どもを身ごもっていたのだ。
「八郎が本当に変わったら伝えよう」
わずかな希望を胸に、二人は待ち続ける。
しかし八郎は変わらない。
そしてある秋、街を記録的な豪雨が襲う。
濁流に飲まれ、命の危機に瀕した八郎が助けを求めた相手は、かつて自分が傷つけ続けた二人だった。
そのとき初めて、八郎は知らされる。
――自分には、二人の子どもがいる。
そして、自分がどれほど大切なものを踏みにじってきたのかを。
「俺、間違ってたのか?」
返事の代わりに、二人の沈黙があった。
最後の瞬間、八郎が口にしたのは、たった一言。
――「ごめん」
しかし、その気づきはあまりにも遅かった。
数か月後、万里と佳奈はそれぞれ男の子を産む。
二人は子どもたちに、父親の過ちも、最後に残した言葉も、いつかきちんと伝えることを決める。
過去は変えられない。
けれど、残された者たちは未来を選ぶことができる。
これは、誰かの優しさを当たり前だと思い続けた男と、最後までわずかな希望を捨てなかった二人の幼馴染、そしてその先に生まれた二つの命の物語。