あらすじ
前世の俺は、欲望のままに生きて誰からも見放され、汚いアパートで孤独死した。
二度目の生で与えられた名は、ネル・アルカディア。
地方小貴族の三男として生まれた俺は、前世の後悔から「己の肉体と欲望を完璧に制御する」と誓う。
前世の化学知識と魔法を組み合わせ、物質の分解と代謝を司る『解毒魔法』の才能を開花させた──はずだった。
「ごめんなさい、ネル様……私、もう……おかしくなりそうなの……」
7歳の頃、魔物の毒に侵された初恋の家庭教師・シルフィを救おうと放った魔法。
だが、未熟な俺の魔法は毒を分解するだけでなく、彼女の神経を焼き、隠された性的衝動を異常増幅(暴走)させてしまう。
自らの無知と欲望の甘さが引き起こした、生々しい悲劇。
目の前で自尊心を打ち砕かれ、泣き叫ぶ彼女の姿は、俺の心に消えない激しいトラウマを刻みつけた。
「魔法は、人の心も肉体も狂わせる毒になる」
己の力を恐れ、引きこもる俺の前に現れたのは、元宮廷薬師の偏屈な老女・エルマ。
彼女のもとで血の滲むような『ミクロ単位の精密制御』を叩き込まれ、俺は再び自らの過ちと向き合い始める。
これは、自分の欲望に怯え、魔法に絶望した少年が、やがて分子構造から世界を癒やす「真の薬師」へと至る、泥臭くも切ない成長の記録。