あらすじ

雨宮燈(あまみやとう)は、神格鑑定局の新人鑑定士。  神や怪異がついた嘘を聞き分ける能力を持つが、人間の嘘には反応しないため、戦闘力も霊視も持たない燈は現場で「戦力外」とみなされ、東京本局の書類室で古い鑑定書の整理をする日々を送っていた。  ある十一月の夜、主任鑑定士・黒瀬宗一郎から北海道の小さな村への同行を命じられた。  村では「ゆきがみさま」と呼ばれる神格が出現し、暴風雪から村を守っていると報告されていた。  また、報告書には、同時期に村外の旅行者が凍死体で発見されたという不穏な一行も添えられていた。  村に到着した燈と黒瀬は、村長・堺田や住民から歓迎を受けるが、燈は「凍死者の話題になると村人全員が示し合わせたように黙る」という違和感に気づく。  調査二日目、燈は林の奥で白い服の少女「ユキ」と出会う。  ユキは「私は人間です」と名乗るが、燈の能力はこの言葉に一切反応しない。  嘘でも真実でもない、判定不能の言葉であった。  村周辺では過去十年間、毎年冬に一人ずつ、村外の者が凍死体で発見されていた。  凍死が起きた夜は必ず村が暴風雪の被害を免れており、両者には相関があると思われた。  ユキによれば、「ゆきがみさま」は元々は自由な神格だったが、十年前にスーツを着た「外から来た人々」によって形を変えられ、「毎年一人を渡す代わりに村を守る」という人工神格であると言う。  村の老人からも、「十年ほど前に役所のような人たちが来てから神が変わった」「村長に口止めされている」という証言が得られ、国家機関の関与が濃厚になっていった。  本局から梶原という上位の鑑定士が現地に現れ、 「凍死者との関連には触れず、保護神格として認定せよ」 と圧力がかかる。  燈と黒瀬は、事実をねじ曲げた鑑定書を書くことを拒み、独自に調査を進める。  夜、ユキの案内でゆきがみさまの本体がある林の奥へ潜入した燈は、初めて神格から直接、言葉にならない意思——「痛い」「出たい」「帰してほしい」——を受け取った。  これは燈の能力がこれまでとは異なる形で機能した瞬間であった。  黒瀬は術式の痕跡から人工神格である証拠を確認し、二人は事実をありのままに記した鑑定書を本局へ送った。  大きな吹雪の夜、燈・黒瀬・ユキの三人は、梶原たちが本局に決定を固定させる前に、縛りを解く最後の試みに出る。  燈は神格の中の少女たちの声を「聞いています」と受け止め続け、ユキが直接触れることで長年の縛りがほどけた。  ゆきがみさまは消滅し、代わりに少女たちは解放された。  その代償として、村は以後、自力で吹雪と向き合わなければならなくなった。  東京に戻った燈と黒瀬は、本局での審問で梶原と対峙する。  燈は「聞こえたものを聞こえなかったことにはできない」と主張。  黒瀬は最後に、燈の能力を「嘘を聞き分けるものではなく、真実を受け取るものだ」と評する。  燈は手帳に、能力では判定できなかったユキの言葉と、名前にならなかった少女たちの「名前」を受け取った事実を書き記した。

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カクヨム
カクヨム2026/08/23
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