あらすじ
王国を七度救った翌朝、ゼジュマール・リードは王に追放された。失敗したからではない。あまりにも正しく、彼がいるかぎり、王も官僚も最後の判断を彼に預けてしまうからだ。
行き着いたのは、寒冷地の町グレイヴ。そこに残った八十三人は、古い染工房も、止まった索道の籠も、弱い熱も、三秒だけ重さを半分にする力も、すべて暮らしの中で使いながら、自分たちの今日をつないでいた。
ゼマーが持つのは正解ではない。物に残された仕事の痕跡と、別々の知恵がまだ出会っていない場所を見る力だ。人と人をつなげられる男も、決めるべき瞬間の判断と、その結果を引き受ける責任だけは人に預けない。
これは、救うことしか知らなかった男が、誰かと暮らす場所を得ていく物語。