あらすじ
「役立たずの養蜂地ごと、我が国から出て行け」
煌びやかな夜会の広間で、王太子ロランから婚約破棄を突きつけられたミレーユ・ファンティア公爵令嬢。義妹セレーヌの嘲笑、貴族たちのくすくす笑い、そして父の沈黙——それらを静かに受け止めたその瞬間、彼女は前世の記憶を取り戻した。
(そうだ。わたし、前世で養蜂と発酵食品の研究者だった)
この世界の『蜂蜜』は、ただの甘味ではない。魔力を宿し、王家の魔法治療も、聖水も、豊穣の儀式も、すべてを根底で支える国家の生命線。そしてそれを集めるのは、蜂蜜を捧げる契約者にだけ心を開く、もふもふの蜜妖精ミエルたち。彼らと心を通わせられるのは、この国でただ一人——ミレーユだけだった。
「役立たず? ふふ。ではその役立たずが支えていたものを——全部、お返しいたしますわ」
優雅に礼をして、ミレーユは蜂蜜とともに国を去る。その日から、この国のすべての蜂蜜が、ゆっくりと結晶化を始めることを、誰もまだ知らない。
忠実な侍女リゼットとともに、そして頼れる黒竜将軍ジークに見守られながら、蜜の聖女は新たな地で誰よりも甘く幸せな日々を手に入れる。裏切り者に、妖精は微笑まない——痛快ざまぁ&もふもふ癒しの養蜂スローライフ、開幕ですわ。