あらすじ
下町の裏路地で、しがない道具修繕屋を営む男・ジャン。
愛想笑いを浮かべながら、近所の住民が持ち込む刃こぼれした包丁や壊れた懐中時計を直しては、向かいの食堂の看板娘・エレナから林檎タルトを分けてもらう――そんな慎ましくも穏やかな日常を送っていた。
だが、帝国軍の殲滅魔術によって山ごと焼き払われた伝説の暗殺集団『ネーベルクレーエ』の生き残りであるジャンにとって、この生活は血塗られた過去を隠すための「平穏という名の檻」だった。
そんなある日、街を牛耳る凶悪マフィア『アイゼンシュランゲ』と悪徳貴族・カスパル伯爵が、下町の利権を奪うため地上げを開始。
隣の靴職人の工房が焼き払われ、ジャンが目をかけていた浮浪児の少年・ニコが拉致されてしまう。
客から預かった大切な道具を踏みにじられ、愛おしい日常を業火に晒されたとき、ジャンの中で何かが静かに外れた。
「道具の手入れと同じだ。癖を見抜けば、解体(バラ)すのは難しくない」
目打ち針、万能プライヤー、研ぎ澄まされた黒打ち短剣。
十年以上封印していた暗殺術を解き放ち、しがない道具屋のおっさんは、たった一人でマフィアと悪徳貴族が巣食う屋敷へと踏み込んでいく――。