あらすじ

余命半年を宣告された元裏社会の調整屋・鬼塚誠司、六十八歳。 失踪の手配、身代わりの用意、裏金の処理、証人の消去――三十年にわたり、彼は「殺し」ではなく、人の運命そのものを裏側から動かしてきた男だった。 死を前にした鬼塚が、たった一つだけ望んだこと。それは、自分のせいで人生を狂わされた七人に、順番に会うことだった。 案内役を頼まれたのは、元刑事で現在は民間調査員の真壁悠人、三十五歳。彼は三十年前、裏社会絡みの事件で警察官だった父を亡くしており、犯罪者を心底憎んでいる。当然、依頼は突っぱねるつもりだった。 だが鬼塚が出した条件はひとつ。 「七人を回りきったら、お前の親父が死んだ事件の、本当のことを話す」 拒めるはずがなかった。 こうして始まる、加害者と遺族の奇妙な同行――元刑事、元歌手、我が子を失った母親、実業家、元組員、神父、そして最後に会う「ある女性」。一人と会うたびに、鬼塚が背負ってきた罪の輪郭が、少しずつ形を変えていく。 謝っても、誰も鬼塚を許さない。それでも彼は回り続ける。 謝罪のためではない。ただ、確かめたいことがあるからだ。 真壁は次第に気づき始める。鬼塚の「罪」には、どれも小さな綻びがある。殺されたはずの人間が生きている。裏切られたはずの相手が、なぜか鬼塚に感謝している。奪われたはずのものが、いつの間にか元の持ち主に戻っている。 ――この男は、本当に全部やったのか。 七人目に会うそのときまで、真壁にも、読者にも、答えは示されない。 これは、裏社会を舞台にした、赦しと沈黙をめぐる長編サスペンスである。

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小説を読もう2026/08/23
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