あらすじ
「坊主、丸は一つだ」
辺境M〈ハノ村〉のユゴ、十六歳。五年に一度の官吏登用試験〈大試〉の願書には、十二の科目から「受ける一つに丸をつけよ」とある。
ユゴは、そこを読み落とした。
村には学校も先生もいない。水路も薬も帳面も馬も、ほかにやる者がいないから全部ユゴがやってきた。
だから当たり前のように、十二すべてに丸をつけて出した。
「え、全部やらないんですか?」
受付の役人が笑った。都の受験生も笑った。締切は今日、受理された願書は書き改められない。
一日目〈算〉。日暮れ、札場の一番上に貼り出された紙は、姓が無いぶん、一枚だけ字が少なかった。
首席 ユゴ
二日目〈書〉。三日目〈薬〉。四日目〈剣〉。
貼り出されるたび、負けたばかりの相手が一人ずつ、ユゴの側へ回ってくる。
これは、都合よく強くなった話ではない。
村で当たり前にやってきたことを当たり前にやっただけの少年が、十二回続けて、札場の一番上に名を貼られる話である。
――なお、十二科目すべてで首席を取った者を、どの官署へ渡すか。王国法には一行も書かれていない。