あらすじ
東京西部で、奇妙な失踪事件が続いていた。
三日間行方不明だった八歳の少年は、発見されたあとも「二、三時間しか経っていない」と言い続けた。
数日後に何キロも離れた場所で見つかった者。消えた日の記憶のまま戻ってきた者。そして、今も帰ってこない者。
大学生の久我悠真、篠宮澪、朝倉玲奈、相馬航の四人は、失踪地点を地図に落としていく。
現在の地図には、何の共通点もない。
だが古い地図を重ねたとき、景色が変わった。
住宅地の下に埋められた池。
物流倉庫の下を流れていた水路。
もう存在しない湿地。
失踪者たちは、かつて水と陸の境界だった場所で消えていた。
調査の途中、四人は三年前に失踪した記者・野崎慎吾の存在を知る。
彼も同じ謎を追い、高尾の古い記録、富士信仰、徐福の不老不死伝説へたどり着いていた。
やがて調査は、真夏の富士北麓へ。
青い湖。観光客。キャンプ場。SUP。富士山。
その明るい夏の水面の下には、古代の土器と、昔の湖岸が沈んでいた。
そして水中調査の映像に、白いものが映る。
それは――三年間、行方不明だった野崎慎吾の手だった。
車も携帯電話も東京に残されていた。
富士へ来た記録は、どこにもない。
では、野崎はどうやって百キロ以上離れた湖底へ来たのか。
さらに四人は、一枚の古い写真を見つける。
昭和六年に湖畔で失踪した十一歳の少年。
その四十七年後に撮影された観光写真の片隅に、失踪時とまったく同じ年頃の少年が写っていた。
もし、彼が同じ人物なら。
昔の人々が語った「神隠し」や「不老不死」とは、本当は何だったのか。
水は場所を忘れない。
東京の地面の下と、富士の湖底。
異なる時代の「水際」を追う四人がたどり着く、夏の歴史ミステリー&ホラー。