あらすじ
【命を救うことを拒んだ医者。彼を死なせることを拒んだ神。】
|ケイデン・クロス《・・・・・・・・・》医師は、すべてを手に入れていた——技術、名声、金。スラム街から這い上がり、日本最高の外科医となった男。しかし、瀕死の息子を救ってほしいと懇願する一人の老婆を、彼は突き放した。
女は彼を呪った。
神はそれを聞いていた。
一度の落雷の後、ケイデンは玉座の間で目を覚ます。彼は【勇者】として異世界での戦争に召喚されていた。だが、問題があった——神々は彼に魔法を与えなかったのだ。力もない。コアもない。何もない。
国王は彼を「役立たず」と断じ、密かに|毒《どく》の|沼地《ぬまち》へと送り込み、始末しようとする。
誰もが彼の死を確信していた。だが、ケイデンはいつも通り、生き延びた。回復魔法を持たない元医師が、医療という概念そのものが失われた世界で。
呪文もない。奇跡もない。あるのはただ、知識と、頑固さと——もう二度と誰も、自分の目の前で死なせはしないという決意だけ。
五年後、召喚された勇者たちは伝説として讃えられていた。称号を持ち、力を持ち、王国の感謝を一身に受けていた。
誰も、七人目のことなど覚えていない。
だが、影の中で——|疫病医《ペストマスク》の仮面をつけた一人の男が、この世界がまだ見たことのないものを築き上げていた。傭兵団、あらゆる毒への解毒薬、そして自分を切り捨てた王国への静かなる革命を。
そして、問いは残る。
すべてを奪われた男が、失うものを何一つ持たずに戻ってきたとき——奪った者たちに、何が起こるのか?
【最弱の勇者が、力ではなく、この世界が忘れ去った「唯一の武器」によって、誰よりも長く生き残る異世界譚。】