あらすじ
空から鉄が降る世界で、都市は巨大な極環塔によって守られていた。
登録された市民だけが安全な街に住めるルーゼル大陸で、リオネ・アステルは、どの国にも属さない「渡り子」として辺境の白鉱街を渡り歩いていた。魔力はゼロ。身寄りもない。けれど鉄雨の夜、落下した鉄片から幼いマヤを守ろうとした瞬間、リオネの手に未知の魔法が生まれる。
触れた非生物二つに、正反対の極を与える魔法――《魔極術》。
剣を敵の盾へ引き寄せ、鎖を橋へ変え、飛び散る鉄片を空中で止める。人には直接使えない不器用な力なのに、使い方次第で戦場そのものをひっくり返せる。
その夜、リオネが救ったのは、敵国グレイヴ帝国の騎士シグルドだった。黒い非磁性鎧を着た彼には、魔極術が通じない。捕縛するはずだった敵は、リオネを利用する命令を拒み、彼女の旅に同行すると言う。
「あなたを引き寄せる魔法は、あなたに使わない」
鉄雨を降らせる極環塔の乱調。空に浮かぶ鉱山。世界を一方向へ固定しようとする天極王。そして、前世の最後に見た鉄の光景。リオネは一人で勝つのではなく、誰も捨てない勝ち方を選べるのか。