あらすじ
人里離れた深山で、ただ愚直に斧を振るい木を伐り倒すだけの生活を送る中年男・アルス。しかし彼の正体は、かつて剣術の理を極め、その頂点に達しながらも己の強さに虚しさを感じて表舞台から姿を消した「世界最高峰の剣客」だった。
彼が静かな隠遁生活を謳歌していたある日、その隠れ家に一人の客が訪れる。それは、かつてアルスの元で教えを受け、今や王国最強の近衛騎士団長へと登り詰めたかつての弟子だった。王国をゆるがす未曾有の危機、そして王都に渦巻く陰謀を打開できるのは師であるアルスしかいないと、弟子は必死の想いで懇願し、彼は半ば強引に王都へと連れ出されてしまう。
当の本人は「自分はしがない木こりだ」「昔の腕など疾うに鈍っている」と本気で思い込んでおり、周囲からの過剰な敬意と自身の自己評価のギャップに困惑するばかり。しかし、王都を脅かす悪徳貴族の刺客や、通常の騎士団では束になっても敵わない高位魔獣との戦闘において、アルスが何気なく繰り出す「木こりの薪割り」の一撃は、王国の常識を遥かに超越した領域に達していた。
かつての弟子たちが憧憬の眼差しで見守る中、アルスの知らぬ間に「伝説の剣神が帰還した」という噂は瞬く間に広がっていく。本人の「早く森に帰って穏やかに過ごしたい」という願いとは裏腹に、弟子たちに担ぎ上げられた最強の木こりは、無自覚なまま王都のあらゆる脅威をことごとく一刀両断し、再び英雄として世界にその名をとどろかせていくのだった。