あらすじ
前世の俺には、いつも赤点がついて回った。
「無能」「要領が悪い」「期待するだけ無駄」——そう繰り返し採点され続けた結果、気づけば俺は、自分で自分に赤ペンを入れる人間になっていた。
異世界に転生した。誰も俺の前世を知らない。差し出されるのは、まっさらな答案用紙だ。
なのに――俺の手には、まだあの赤ペンが握られたままだった。
物流ギルドでの在庫整理。薬草の分類。俺が「どうせ失敗する」と怯えながらこなす仕事は、なぜか周囲から「凄腕」「有能」と評価されてしまう。
褒められるたびに困惑する。期待されるたびに息苦しくなる。だっておかしいだろう、俺はあの惨めな「無能」のはずなのに。
「あんた、自分に下してる点数、低すぎじゃない?」
フラットな目で俺を見る見習い薬師・エルネだけが、俺の採点基準のおかしさに気づいている。だが、その本人にも何か隠している色眼鏡があるようで——。
自分がつけた点数と、他人がつけてくる点数。そのズレの中で、俺はもう一度、自分自身を採点し直せるのか。
これは、無双でも、ざまぁでもない。
ただ、自分の中の「赤ペン」と向き合う、ちょっと不器用な二周目の物語。