あらすじ
2050年。すべてのAIを生んだ国家は、人間の言葉と機械の言葉を完璧に見分ける制度を作り上げた。判定精度、100%。
物部昊(もののべ・こう)、24歳。彼が書いたものは、すべて「AI製」と判定される。作文も、履歴書も、手紙も。一度の例外もなく、24年間。
試験は零点。就職は不可能。出版も、契約も、恋文すら、制度の上では存在しない。彼は人間なのに、人間だと証明できない。
それでも彼は、毎晩、誰にも読まれない手記を書き続けている。
ある日、一人の統計屋が彼を訪ねてくる。「100%は理論上ありえない」と主張して学会を追われた男。彼は昊に問う。誰もが宣告しかよこさなかったこの世界で、初めて、問う。
「君は、人間か?」
判定精度100%の制度が、なぜこの男だけを撃ち続けるのか。調べるほどに矛盾は深まり、やがて二人は、この国の「建国神話」の核心に触れてしまう。
これは、測れなかった定規の話だ。
近未来日本を舞台に、人間であることの証明をめぐる、静かで残酷なSF。全編、主人公の手記として綴られる。