あらすじ
人口十八万人の地方都市、鳴神市。
市役所に勤める二十四歳の榊原湊人は、異動先の地域振興課で奇妙なファイルを渡された。
『令和八年度 死祭実施要綱』
そんな祭りは聞いたことがない。
市のホームページにもない。
観光パンフレットにも載っていない。
予算はゼロ円。
それなのに主催者は、鳴神市。
そして、祭りの参加予定者名簿には四百三十七人の名前が記載されていた。
湊人が住民記録を照会すると、さらにおかしなことが分かる。
四百三十七人全員が、すでに死亡していた。
八月二十三日。
日が沈むと、町にはいつの間にか無数の提灯が灯り始める。
屋台が並ぶ。
祭囃子が聞こえる。
そして三年前に死んだ元市役所職員が、庁舎の受付へ現れた。
「今年もよろしくお願いします」
死祭。
それは死者を呼び出す祭りではない。
現世へ帰ってきてしまった死者を、夜明けまでに送り返すための祭礼だった。
死者から物を受け取ってはならない。
祭囃子を止めてはならない。
午前三時十三分を過ぎてから、背後より名前を呼ばれても振り返ってはならない。
そして夜明けまでに、最後の一人を必ず送り返さなければならない。
一人でも残れば、祭りは終わらない。
だが今年の参加者名簿には、本来存在するはずのない記載があった。
死亡年月日。
令和八年八月二十四日。
明日死ぬ人間の名前が、すでに死者の名簿に載っていた。
しかも、それは一人では終わらなかった。
地方都市の小さな祭りから始まる、
行政×民俗学×怪異×死者の現代ホラー。
そして鳴神市はまだ知らない。
その夜、日本全国で「死者の祭り」が始まろうとしていたことを。