あらすじ
美里は、長い時間をかけてようやく宮古島へ戻ってきた。
逃げるためではない。ここで生きるという、自分の“これから”を確かめるために。
けれど島は、ただの故郷ではない。
潮の匂い、風の音、夕暮れの海──そのすべてに、幼い頃から特別だった青年・琉太の気配が静かに残っている。
観光地として賑わう前の、素朴で広い島。
二人で駆け回った砂浜、風にさらわれた笑い声。
あの頃の無邪気な時間が、いつしか言葉にならない想いへと変わり始めた、あの瞬間。
そして、美里の胸に今も残る“ひとつの言葉”。
島に戻った彼女を迎えたのは、変わりゆく景色と、変わらず吹き続ける風。
その風は、止まっていた時間をそっと揺らし、忘れられない声を呼び起こす。
未来はまだ白紙のまま。
それでも美里は知っている──自分がここへ帰ってきた理由を。
『ビーチソング』は、風になった青年と、彼の想いを胸に歩き出す女性が、
ふるさとの風景の中で“止まっていた何か”を少しずつ動かしていく物語。