あらすじ
「口の裂けた女を探してほしい。報酬は六万五千ゴールド」
自由都市グラナで暮らすレオン・ヴァイスは、実力に似合わず何年もB級に居座っている二十八歳の傭兵だ。
仕事は選ばない。
護衛、失踪者捜索、盗賊退治、魔獣討伐――そして時には、説明のつかない怪事件まで。
そんなレオンの隣には、いつも灰銀色の髪を持つ女シグリッドがいる。
美しく、人間社会の常識には少し疎く、そしてどう考えても普通の人間ではない女だ。
夜道で「私を見て」と囁く、顔を隠した女。
自分とまったく同じ顔をしたもう一人の男。
死の前にだけ現れる黒犬。
子供だけに聞こえる夜の笛。
船乗りを水底へ誘う女の歌。
レオンとシグリッドは、ギルドへ持ち込まれる奇妙な依頼を一つずつ片づけていく。
だが、怪異を追って見えてくるのは怪物だけではない。
怪談を殺人に利用する商人。
恐怖から罪のない者を怪物扱いする人々。
戦争が終わって八年経っても消えない傷。
そして、旧アルカディア王国が隠した禁忌の技術。
なぜレオンはA級になろうとしないのか。
なぜシグリッドは彼から離れないのか。
なぜ二人の命は、奇妙なほど深く結びついているのか。
世界を救うつもりはない。
英雄に戻るつもりもない。
依頼を受け、怪異を調べ、必要なら剣を抜く。
そして仕事が終わったら、二人で宿に帰って飯を食う。
これは、戦争で人生を一度終えたつもりのB級傭兵と、人間を知ろうとする銀狼が、灰色の街で再び「生きる場所」を見つけていく怪事件ファンタジー。